日本顎咬合学会 認定医証
顎関節症について
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閉口時
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開口時
顎関節の構造は頭部の下顎窩(かがく・か)と下アゴの下顎頭(かがく・とう)の骨の接合部に「関節円板(かんせつ・えんばん)」という軟組織が介在しています。
関節円板は口を開け閉めする時に下顎頭は前後に動きますが、関節円板は下顎頭と一緒に動きます※「顎・口腔のCT/MRI」酒井 修・金田 隆著(メディカル・サイエンス・インターナショナル)より引用
顎関節症の症状は?
顎関節症の主な症状を列挙します。
- 口を開け閉めする時にスムーズに運動しない。
- 不規則にガクガクするような動きがある。
- 口を開けるときにコリコリあるいはミシミシと音がする。
- 口を開け閉めする時に耳の前が痛くなる。
- 頭痛、首の緊張感はある(主に片側性)。
- 口が開きずらい あるいは口を開けるときに引っ掛かりを感ずる。
他の疾患との鑑別診断が必要ですが顎間節症の主症状を挙げてみました。
顎関節症の原因は?
顎関節症が引き起こされる原因を記載します。
- 環境因子(社会的なストレスetc.)
- 行動因子(硬個物の咀嚼、楽器演奏etc.)
- 惡習癖(歯ぎしり、くいしばりetc.) 顎関節症治療指針「日本顎関節学会発行」より抜粋
- 咬み合わせの不調和
- 歯が無くなったままの放置
その他
なども考えられます。
顎関節症の治療法は?~診査・診断の重要性~
顎関節症の治療法は?~診査・診断の重要性~
顎関節部の異常がどこの部分があるかを診断します。
- ●顎関節を構成する骨(下顎窩あるいは下顎頭)
- ●顎関節を構成する骨以外の組織(関節円板や靭帯など)
- ●顎運動をつかさどる口腔周囲の筋肉(開口筋、閉口筋などの咀嚼筋群)
『咬み合わせ』を診査・診断し改善するための方法を模索します。
顎関節症治療~症例 1~
~症例 2~
カリエスが進行したため「咬み合わせ」が悪くなりアゴの動きに異常をきたした状態、いわゆる「顎関節症」を誘発した症例です。
奥歯の「咬み合わせ」を安定させることを目的に先行してインプラント治療を行い、全部の歯に「仮歯」を製作しています。
顎関節の状態を診査・診断するためにさまざまな検査を開始しました。
顎関節部構造を把握するためにCT及びMRIによる画像検査
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右側
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左側
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右側
左側
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閉口位
開口位
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左側関節円板の位置異常が見られます。
ARCUS DigmaⅡによる
顎運動検査
アゴがどこで咬んでいるかを見ています。
中心から離れるほど理想的な位置からズレが大きくなります。
開閉口時のアゴ運動の軌跡を記録しています。
左右の動きに差があるのが分かりました。
CT及びMRIによる画像検査では骨構造において問題となる所見は見当たらないが、関節円板に位置異常が見られました。
そのためアゴの動きに左右差が見られます。
- ①関節円板の位置異常を解消
それにより下顎骨の位置異常が、改善されます。 - ②正常な下顎骨の位置に合わせて「咬み合わせ」を再構成します。
治療方針は
関節円板の位置異常を修正して、開閉運動がスムーズに可動することを確認したうえで「仮歯」を製作しました。
医療法人社団
さかた歯科医院
「仮歯」を装着した状態です。
顎運動を記録しました。
かなりスムーズな動きになっています。
「最終的な冠」を装着した状態です。
審美性・強度を兼ね備えた「ジルコニア素材」の冠を装着しました。
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右側
左側
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顎関節
CT画像顎関節
MRI画像
治療終了後の記念写真撮影
治療終了時の顎関節の状態をCT画像およびMRI画像検査で正常な状態に回復していることを確認しました。
治療終了後の状態に、満足されている様子でした。
顎関節症についての
「まとめ」
- ●顎関節症は雑音や顎開閉口運動障害、疼痛などいろいろな症状を伴う疾患です。
- ●初期の症状では顎関節部に可逆的な変化であることが多く治癒する可能性があります。
- ●放置していても決して治癒するものでは無いと考えます。
- ●長期間放置をした場合には顎関節を構成する硬組織や軟組織に非可逆的変化を起こして完治が難しくなります。
顎関節症の治療について
顎関節は直接、目で見えない部分です。
そのため各種の画像(CT、MRI)による診査・診断と『咬み合わせ』を検査するための『咬合器』と言われる器具の活用、顎の動きを検査するための『顎運動検査』のための測定器による総合診断が不可欠になります。※これらの検査項目は保険適応範囲外となり、その後の治療は自費治療となることをご理解ください。
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咬合器
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CT画像
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顎運動測定器
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MRI画像